出戻り社員を受け入れている会社は55.5%。リクルートが2023年3月、5,048人の人事担当に聞き、従業員30人以上の企業に勤める2,761人を集計した調査の数字です。
ところが同じ調査で「いま実施している採用手法」を挙げてもらうと、アルムナイからの採用は12.3%。半数以上が受け入れているのに、採用の手段として数えている会社はごく一部でした。
この記事では、アルムナイ採用とは何かを整理したうえで、なぜ実感と数字がずれるのかと、制度をつくる前に打てる一手を扱います。
アルムナイ採用とは何か
アルムナイ採用とは、一度自社を退職した元社員を、あらためて自社の候補者として迎える採用手法です。カムバック採用、出戻り採用とも呼ばれます。
「アルムナイ(alumni)」は、もともと学校の卒業生・同窓生を指す言葉です。人事の文脈では、これを「自社を離れた人たち」の意味で使います。
言葉を借りたことには意味があります。卒業生は、母校と縁が切れた人ではありません。退職を「関係の終わり」ではなく「関係の変化」と見る——その見方の置き換えが、この手法の中身です。
同じ2,761人が答えた、同じ調査の中の2つの数字です。
受け入れている会社は55.5%、受け入れていない会社は34.3%、わからないが10.2%でした。過半数の会社が、元社員が戻ってくること自体は歓迎しています。
一方、実施中の採用手法を複数回答で聞くと、アルムナイからの採用は12.3%。ハローワーク51.1%、自社採用サイト46.3%、人材紹介41.2%と並べると、いちばん下のほうにあります。
「受け入れる」と「採れる」の間にあるもの
はじめに断っておくと、この2つはそのまま引き算できる数字ではありません。受け入れの55.5%は単一回答、採用手法の12.3%は複数回答で挙げてもらった選択肢の1つです。
それでも、並べると見えることがあります。調査を行ったリクルートは、この結果を「アルムナイネットワークを明確に採用手法としては認識していないものの、実質的には半数以上の企業が実施している」と説明しています。
やっていないのではなく、採用の手段として数えていない。ここから先は私たちの見方ですが、その差は意思ではなく段取りにあると考えています。
「受け入れている」は、来た人を断らない、という受け身の姿勢でも成立します。向こうから連絡が来るのを待っている状態でも、この回答はできます。
対して「採用手法として実施している」は、こちらから声をかけられる状態を指します。そのためには、誰が辞めたかの名簿と、連絡していい関係が要ります。足りていないのは受け入れる気持ちではなく、この2つです。
実際、同じ調査でアルムナイネットワークの構築に取り組んでいる会社は31.0%、およそ3社に1社でした。取り組んでいない会社のうち、予定があると答えたのは11.2%です。
つまり、大半の会社はまだ名簿を持っていません。裏を返せば、ここは先に動いた会社が空いている場所を取れる領域だということです。
制度より先に、最終出社日を変える
アルムナイ採用を始めるのに、制度もツールも要りません。最初に変えるのは、最終出社日の一通です。
つながりが切れる瞬間は、退職から半年後ではありません。最後の日に、何も渡さずに送り出したその時点です。
ここを個人の善意に任せると、上司との相性で結果が変わります。良い関係だった人とは続き、そうでない人とは切れる。会社としての名簿は、そうしてできあがりません。だから定型にします。
①在籍中の仕事への具体的な謝辞(案件名か数字を1つ入れる)/②今後こちらから近況を送ってよいかの確認/③戻る道があること/④窓口は個人ではなく会社の連絡先〈 〉
記入例(架空):「〇〇さん、3年間ありがとうございました。昨年の△△案件で納期を2週間縮める段取りを組んでくれたことは、いまも現場の標準になっています。年に1〜2回、当社の近況をお送りしてもよいでしょうか。もしいつか戻りたくなったら、その時は選考ではなく面談から始めます。窓口は採用担当(saiyo@example.com)です。」
この一通が効くのは、送る側の都合ではなく、受け取る側に「連絡していい」という許可が残るからです。許可のない相手に2年後に連絡するのは、こちらも気が引けます。
辞めた人への態度は、実は在籍している社員がいちばんよく見ています。送り出し方が冷たい会社で、残った人が長く安心して働けるかというと、なかなか難しい。アルムナイの整備は、採用の話であると同時に、いま社内にいる人へのメッセージでもあります。
辞めて2年たった元社員の側に立つと、古巣はおそらく「何も情報が入ってこない会社」ではないでしょうか。戻るかどうかを迷う以前に、いま何をしている会社なのかを知らない。
転職先で違和感を覚えたとき、選択肢として古巣を思い出せない。その理由は、嫌になって辞めたからではなく、単に情報が途絶えているからかもしれません。
会社の側に話を戻すと、元社員は自社の商流も社風もすでに知っている候補者です。人を集めることに手をかける前に、すでに知り合っている人が何人いるかを数えてみる価値はあります。
今日からできる3つ
- 直近3年の退職者を、名前で書き出す
母集団は「つくる」前に、すでに手元にあります。名簿がないまま制度だけ整えても、声をかける相手が浮かびません。まず人事が持っている退職者リストを、採用の目で見直すところからです。 - 最終出社日の一通を定型にする
上の例の4項目を、退職手続きの流れに組み込みます。属人の善意に任せると、上司との相性でつながりが途切れます。定型にする目的は、丁寧に見せることではなく、全員に等しく「連絡していい」関係を残すことです。 - 年1回、近況を送る担当を決める
頻度は年1回で足りますが、続けないと意味がありません。ネットワーク構築に取り組んでいる会社は3社に1社。まだ少ないうちに始めた会社ほど、募集をかけずに声をかけられる相手を増やせます。
よくある質問
Q. アルムナイ採用のデメリットは何ですか?
いちばん起きやすいのは、残っている社員の不公平感です。元社員だからと待遇を上乗せすると、社内から見て理由の説明がつかなくなります。等級や給与の決め方は通常の中途採用と同じ基準に揃えておくのが安全です。
Q. 円満でない辞め方をした人にも声をかけたほうがいいですか?
全員に声をかける必要はありません。アルムナイ採用は同窓会ではなく採用活動です。「もう一度一緒に働きたい人」だけを名簿に載せる、という線引きを最初に決めておくと運用が続きます。
Q. 専用の制度やツールは必要ですか?
最初は要りません。名簿と、年1回の連絡があれば始められます。実際、アルムナイネットワークの構築に取り組んでいる会社は31.0%で、多くはまだ何も整えていない段階です。
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出典
株式会社リクルート「企業の人材マネジメントに関する調査2023 アルムナイ(カムバック採用/退職者コミュニティ)編」2023年9月20日公表・調査2023年3月29〜31日・全国の人事事務従事者5,048人のうち従業員30人以上の企業に勤める2,761人を集計 recruit.co.jp



