求人票に「月平均残業20時間」と書いたとき、それは多い数字でしょうか、少ない数字でしょうか。即答できる採用担当者は、あまり多くありません。
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、一般労働者の残業時間は1か月あたり13.2時間でした。ただし業種別に見ると、医療・福祉の6.7時間から運輸業の24.1時間まで、3.6倍の開きがあります。
この記事では、残業時間の平均という数字の正しい読み方と、自社の残業を求人票にどう書けば候補者の不信を招かずに済むのかを、埋めるだけの3行の型までまとめます。
残業時間の平均は、月に何時間か
日本の一般労働者の残業時間は、1か月あたり平均13.2時間です。厚生労働省の毎月勤労統計調査(2025年分結果確報・2026年2月25日公表)が、事業所規模5人以上の調査産業計(農林漁業や公務などを除く)を集計した数字です。
ここでいう残業時間は、統計上は「所定外労働時間」と呼ばれます。会社が定めた所定労働時間を超えて実際に働いた時間のことで、休日出勤の時間も含みます。
パートタイム労働者を含めた就業形態計では、9.8時間まで下がります。求人票の比較対象にするなら、正社員募集であれば一般労働者の13.2時間のほうを見てください。
規模を絞ると、少しだけ上がります。事業所規模30人以上の一般労働者は14.4時間でした。小さな事業所を含めた5人以上の集計より、1.2時間長い計算です。
なお前年からは2.0%減っています。所定外労働時間は2023年以降、3年続けて前年を下回っています。
同じ「月20時間」でも、業種が変われば意味が変わる
残業時間の平均は、全国の一本値で語れる数字ではありません。業種によって、最も長い業種と最も短い業種で3.6倍の差がつきます。
最も長い運輸業・郵便業(24.1時間)と、最も短い医療・福祉(6.7時間)の差は17.4時間。1日あたりにすると1時間近い開きになります。
この図を、自社の数字を当てはめる物差しとして使ってください。たとえば製造業で月20時間なら、業種平均の14.7時間より5時間ほど長い会社ということになります。
逆に、運輸業・郵便業で月20時間なら業種平均の24.1時間より短く、むしろ売りになる数字です。同じ「20時間」が、業種が変わるだけで説明の向きごと入れ替わります。
候補者は同じ業種の求人を何本も並べて見ているはずです。だとすれば比べられているのは全国平均ではなく、隣に並んだ同業他社の数字ということになります。
求人票の残業欄で、候補者が引っかかる3か所
残業が多い会社が敬遠されるとは限りません。わたしたちが現場で見てきた限りでは、候補者が引き返すのは、数字が書かれていない求人票や、数字の根拠が読み取れない求人票のほうです。
求人票の残業欄でつまずきやすいのは、次の3か所です。
- 「残業あり」「若干あり」とだけ書き、時間数がない
- 固定残業代の時間数だけを書き、実際の残業実績を書いていない
- 平均だけを書き、繁忙期にどこまで増えるかの幅がない
2つめは特に誤解を生みます。「固定残業代30時間分を含む」とだけ書かれていれば、候補者はその30時間まで働く前提だと読みます。
実績が12時間なら、そう書き足すだけで読み方が反転します。30時間分の手当をもらいながら実働は12時間、という条件に見えるからです。
3つめの「幅」も同じ理屈です。繁忙期に月30時間まで伸びる会社が平均12時間とだけ書けば、入社後にその差が不信として返ってきます。先に書いておくほうが安く済みます。
この3か所を埋めると、残業欄は次の3行になります。
①実績:月平均〈 〉時間(〈 〉年〈 〉月〜〈 〉月・〈対象部署〉の実績)
②幅:繁忙期(〈 〉月頃)は月〈 〉時間程度
③固定残業代:〈 〉時間分/〈 〉円を支給、超過分は別途支給
記入例(架空の製造業A社):①実績:月平均12時間(2026年4月〜6月・生産管理課の実績)/②幅:繁忙期(9月・3月)は月25時間程度/③固定残業代:30時間分/48,000円を支給、超過分は別途支給
集計期間と対象部署を書くのが要点です。数字そのものより、その数字がどこから来たのかが書いてあるほうが信じられます。
残業時間の開示は、少なく見せる競争になりがちです。ただ実務では、正確に見せた会社のほうが応募後の歩留まりがよくなることが少なくありません。数字を盛らなかった会社だけが、面接で残業の話を正面からできるからです。
残業は、候補者にとって転職の引き金そのものです。厚生労働省の雇用動向調査(令和6年)では、前職を辞めた理由に「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」を挙げた人が女性で12.8%、男性で8.6%でした。
残業だけでなく、労働時間と休日の条件をまとめた項目です。
女性では「その他の個人的理由」を除くと最も多い理由で、前年からの上昇幅もこの項目が最大です。前の会社の残業から逃げてきた人が、御社の求人票の残業欄を読んでいます。
だから空欄は、少ないとも多いとも受け取られません。「書けない事情がある会社」と読まれます。求人票で不利になるのは残業の長さではなく、長さを言わないことのほうです。
今日からできる3つ
- 直近3か月の残業実績を、募集する部署だけで出す
全社平均ではなく、その候補者が配属される部署の数字を出します。全社平均は部署間の差でならされてしまい、入社後に「聞いていた話と違う」が起きる主因になります。 - 自社の業種平均と比べて、どちら向きに説明するかを決める
業種平均より短ければ売りとして前に出し、長ければ理由と対価(手当・振替休日・繁忙期後の調整)をセットで書きます。候補者が比べているのは全国平均ではなく同業他社なので、この一手間で読まれ方が変わります。 - 固定残業代がある求人は、実績を必ず併記する
時間数だけを書くと、その時間まで働く条件として読まれます。実績を足すと同じ求人が有利な条件に見えるため、書き足しのコストに対して効果がいちばん大きい修正です。
よくある質問
Q. 残業時間の平均は何時間ですか?
厚生労働省の毎月勤労統計調査(2025年分結果確報)によると、一般労働者で1か月あたり13.2時間です。パートタイム労働者を含めた就業形態計では9.8時間、事業所規模30人以上の一般労働者では14.4時間になります。
Q. 求人票に残業時間を書かないと違法ですか?
職業安定法の明示ルールでは、所定労働時間を超える労働の有無が明示事項に含まれます。平均残業時間そのものの記載は義務ではありませんが、書かない求人は候補者から避けられやすいため、実務上は書く前提で考えるほうが有利です。
Q. 部署によって残業時間がまったく違う場合はどう書けばよいですか?
募集する部署の実績を書き、対象部署名と集計期間を添えてください。全社平均を書くと、残業が多い部署に配属された人との間で入社後のギャップが生まれます。
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出典
厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」2026年2月25日公表・事業所規模5人以上 mhlw.go.jp
厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」転職入職者が前職を辞めた理由 mhlw.go.jp
厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ(労働条件の明示等)」職業安定法に基づく募集時の明示事項 mhlw.go.jp



