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求人票の差別化、書くことがない会社へ──社員に聞く3つの質問と書き換え例

求人票の差別化、書くことがない会社へ──社員に聞く3つの質問と書き換え例

「求人票で差別化を」と言われても、給与も休日も同業と横並びで、書けることが見当たらない。中小企業の採用担当から、よく聞く悩みです。

けれど、求職者の視線が求人票でいちばん集まっていたのは仕事の内容でした。労働政策研究・研修機構の2012年の報告書で、応募に前向きになるのも、ためらうのも「仕事の内容」だったとされています。

この記事では、差別化の材料が社内で見えなくなる理由と、入社3年以内の社員に聞く3つの質問、その答えを求人票の冒頭3行に書き換える例を紹介します。

求人票の差別化とは?給与や休日ではなく、仕事の中身で違いを見せること

求人票の差別化とは、同業他社の求人票と並べて読まれたときに、自社にしか書けない事実が一つでも見つかる状態をつくることです。

労働政策研究・研修機構(JILPT)は2012年の報告書で、実験に参加した求職者が求人票を読むときの視線を、装置で記録しています。注目が集まったのは「仕事の内容」でした。

実験後の聞き取りでも、応募に前向きになるのも、ためらうのも「仕事の内容」だったとされています。もっと詳しく知りたい情報としては「職場環境・職場の雰囲気」「仕事内容をもっと詳しく」が多く挙がりました。

同じ報告書は、賃金水準や福利厚生と違い、仕事の中身(達成感や成長、任せ方)は中小企業でも工夫できると述べています。工夫した中身は、そのまま求人票に書ける材料になります。

10年以上前の実験ですが、今の行政資料も同じ欄を重く見ています。青森労働局の資料は、ハローワークの仕事内容欄(30字×12行)のうち、検索結果の一覧に出るのは最初の3行だけだとして、冒頭3行を濃く書くよう勧めています。

同じ資料は、一覧に出る職種欄(最大28字)にも、職種名だけでなくアピール点を入れるよう求めています。

なぜ求人票に「書くことがない」と感じるのか?

求人票に書くことがないと感じるのは、強みがないからではありません。社内の人ほど、自社の仕事を「当たり前」として見てしまうからです。

一度知ってしまったことを、知らない人の目で見直すのは難しい。心理学で「知識の呪い」と呼ばれる現象です。

たとえば「先輩が隣で図面を一緒に読む」「面接で工場を案内する」といった日常は、社内では書くほどのことに見えません。けれど初めて読む候補者には、入社後を想像できる数少ない手がかりです。

もう一つは、書く人の位置です。求人票を書くのは人事や経営者であることが多く、現場の1日をいちばんよく知る人とは限らないのではないでしょうか。材料は人事の机の上ではなく、最近入社した社員の記憶の中にあります。

差別化の材料はどう集める?入社3年以内の社員に聞く3つの質問

求人票の差別化の材料は、入社3年以内の社員に3つの質問をし、答えを言い換えずに書き留めると集まります。入社から日が浅い人ほど、外から来たときの目をまだ覚えているためです。

  1. 「入社を決めた最後の一押しは何でしたか」
    他社と比べたうえで選んだ理由を聞きます。候補者が求人を並べて比べる場面をそのまま再現するので、差別化の一行にいちばん近い答えが出ます。給与や休日の話が返ってきたら「同じ条件の会社がほかにもあった中で、なぜここに」と一段掘ります。
  2. 「入社前に想像と違ったことは何ですか」
    良い方も悪い方も両方聞きます。良い意外は、求人票で先に言える強みです。悪い意外は、書いておけば入社後のずれを減らせる情報になります。
  3. 「友人に、この仕事をどう説明していますか」
    社外の人に向けた説明は、社内用語や肩書きを外した言葉で返ってきやすい質問です。その言葉は、仕事内容欄の冒頭にほぼそのまま使えます。

聞く相手は、まず3人からで十分です。同じ答えが2人から出たら、それが職場の事実に近い一行の候補です。

例:社員の答えを求人票の冒頭3行に書き換える

① 社員の答え(入社2年目・前職は食品の卸):「面接の日に工場を1時間案内してもらい、図面の読み方を教えてくれる先輩の席まで見せてもらった。ほかの2社は会議室だけだった」

② 書き換え前の冒頭:「生産計画の立案、工程管理、納期調整をお任せします。」

③ 書き換え後の冒頭:「図面の読み方は、先輩の隣で覚えるところから始めます。面接の日には工場を1時間ほど一緒に歩き、配属予定の席までご案内します。」

従業員40人の金属部品メーカーが生産管理職を募集する、架空の会社の記入例です。給与や休日の欄は変えず、仕事内容の冒頭だけを書き換えています。③は約60字で、一覧に出る30字×3行に収まります。

Coachers編集部の考察

求人票の差別化は、何を書き足すかより、材料をどこから持ってくるかで決まります。人事が机で考えた強みは、たいてい同業の求人票にも書いてあります。

書いた一行は、求人票の中だけでは完結しません。「面接で工場を案内する」は面接の日に、「先輩の隣で覚える」は入社初月に、候補者が本当かどうかを確かめます。

求人票→応募→面談→内定→入社のどの段でその一行が実現するかまで決めて、初めて差別化として効きます。

求職者目線

同じ職種の求人を何件も並べて見ている候補者には、「工程管理をお任せします」は、どの会社にも書いてある一文に見えるかもしれません。入社した日の自分の姿が浮かぶ一行があるかどうかが、応募を決める前の小さな決め手になるのではないでしょうか。

社員の言葉は、整えすぎないほうが伝わります。書き換えるときも、固有の場面と数字は残してください。

今日からできる3つ

  1. 入社3年以内の社員3人に、15分ずつ時間をもらう
    3つの質問だけを聞き、答えは言い換えずに書き留めます。人事が要約すると、固有の場面が「風通しの良い職場」のような一般論に戻ってしまうためです。
  2. 2人以上から出た答えを、職種欄と仕事内容欄の冒頭3行に置く
    一人だけの話は例外かもしれませんが、2人から出れば職場の事実に近づきます。冒頭に置くのは、ハローワークでは一覧に出る仕事内容が冒頭3行だけで、視線が集まるのも仕事の内容だからです。
  3. 書いた一行を、面接と入社初月の段取りに書き写す
    求人票で約束したことが面接や初日に起きないと、差別化はそのまま入社後のずれに変わります。誰が、いつ実行するかまで決めておきます。

よくある質問

Q. 給与や休日で他社に勝てない会社でも、求人票で差別化できますか?

できます。条件欄は正確に書いたうえで、差は仕事の内容で出します。任せ方や育て方は会社ごとに違い、その中身を書けば、同業の求人と並んでも違いが見えます。

Q. 社員に聞くと、良いことしか言わないのでは?

「想像と違ったこと」を良い方と悪い方の両方で聞くと、厳しい面も出やすくなります。人事ではなく現場の先輩が聞く、無記名のメモで集めるといった方法もあります。

Q. 求人票の差別化は、どの欄から手をつければいいですか?

仕事内容欄の冒頭3行と職種欄からです。ハローワークの求人では、検索結果の一覧に出るのは職種欄と仕事内容の最初の3行などで、労働局の資料も求人票を開いてもらうにはこの部分が大事だとしています。

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出典

労働政策研究・研修機構「中小企業における人材の採用と定着―人が集まる求人、生きいきとした職場/アイトラッキング、HRMチェックリスト他から―」労働政策研究報告書No.147・2012年3月30日 jil.go.jp

青森労働局「求人票作成時のポイント」(2026年10月19日閲覧) jsite.mhlw.go.jp

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