「採用にAIを入れたのに、思ったほど楽になっていない」——そんな感覚はありませんか。ツールは増えているのに、確認や調整の手間は前とあまり変わらない。そんな声を、最近よく耳にする気がしています。
株式会社TalentXの調査では、採用AIを導入する企業は58.3%にのぼります。ところが導入後も「工数は変わらない、むしろ増えた」と答えた人事担当者が53.3%。半数以上が、期待した効果を実感しきれていないという結果でした。
これはAIの性能の問題なのでしょうか。それとも、別のところに分かれ目があるのでしょうか。今日は「導入しただけ」で止まらないために、わたしたちにできることを一緒に考えてみたいと思います。
採用AIを入れたのに、なぜ工数が減らないのか
採用AIとは、書類選考・日程調整・スカウト文作成といった採用業務の一部を、AIが自動化・支援する仕組みのことです。導入は着実に進んでいて、TalentX社の調査では大企業の58.3%がすでに何らかの形で採用AIを使っています。
ところが、その手応えはまだら模様のようです。同じ調査で、導入後も「工数が変わらない・むしろ増えた」と答えた人事担当者は53.3%。「入れた=楽になった」とは限らないのが、いまの実態かもしれません。
分かれ目は「役割の線引き」──入れただけの採用と、機能する採用
差を生んでいるのは、AIの賢さよりも「何をどこまで任せるか」を決めているかどうかのようです。同調査では、AIと人の役割分担が「不明確」な企業が67.9%にのぼりました。線引きが曖昧なまま入れると、AIの出力を人が確認し直す二度手間が生まれ、かえって工数が増えてしまう——そんな構図が見えてきます。
もうひとつ気になるのが、効果の「見えなさ」です。ROI(投資対効果)を定量的に把握していない企業は51.3%。ものさしを持たずに走ると、続けるべきか見直すべきかの判断もしづらくなります。次に、つまずきの構造を数字で整理してみます。
数字で見る、3つの”設計の空白”
三つ目の数字は見落とせません。効率化だけを目的にしたAI活用は、候補者の59.8%で「志望度が下がる」要因になり得るという結果です。一方で候補者の40.1%は「自分を深く理解した対話」を期待しています。AIで手間を減らすことと、候補者と向き合うことは、切り分けて設計する必要がありそうです。
わたしたちCoachersも、AIツールの話題になると「まず入れてみよう」となりがちです。でも今回の数字を見ると、つまずきの多くは性能ではなく”線引きの空白”から生まれているように感じます。今回の調査は大企業中心(従業員500名以上)ですが、課題の構造は規模を問わず通じる気がしています。
HRブランディングの観点で見ると、AIに任せて良いのは「手間」であって、「候補者にどう向き合うか」という体験そのものは人が設計する部分です。効率化だけを優先すると志望度が下がる(59.8%)という結果は、そのことを示しているのかもしれません。求人原稿や採用サイトで”誰に何を伝えるか”を先に決めるのと同じで、AIも「どこを任せ、どこは人が担うか」を描いてから入れると、はじめて手応えにつながる気がしています。
大切なのは、AIを入れるかどうかより「自社の採用のどこを良くしたいか」を先に置くこと。そこが定まると、AIは目的を速める道具になり、候補者体験を損なわずに工数も減らせる——そんな両立に近づけるのではないかと感じています。
- 株式会社TalentX「<AIネイティブ採用調査2026>採用AIを導入する企業の約53.3%が『機能していない』実態、採用力を高める鍵は『候補者体験』」(2026年4月28日調査/人事担当者n=213・中途採用候補者n=221) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000268.000036924.html



