夏のボーナス後、就業者の48.7%が転職を検討・実行──いま選ばれる求人の整え方
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夏のボーナス後、就業者の48.7%が転職を検討・実行──いま選ばれる求人の整え方

Branding, 2026.07.17 By 中村 尚人

「ボーナスをもらってから、辞めよう」——。もし御社の社員がそう考えていたとしたら、少しどきっとしますよね。でも視点を変えると、いまこの瞬間、他社でそう決めた人たちが次々と転職市場に出てきている、ということでもあります。

IT人材サービスのPE-BANK社が2026年6月に行った調査では、ボーナス支給後に転職を「考えている・考えたことがある・実際にした」人は、合わせて48.7%にのぼりました。就業者のほぼ2人に1人が、賞与をキャリアの「区切り」として意識している計算です。

夏のボーナスが出そろう7月は、1年の中でも候補者が動きやすい季節。この時期に動く人たちは、どんな気持ちで求人を見ているのでしょうか。そして、選ばれる側の企業は何を整えておけばいいのか。一緒に考えてみたいと思います。

KEY DATA / この記事の数字
ボーナス支給後に転職を考えた・実行した就業者(検討中・経験含む) 48.7%
転職を検討するきっかけに「給与」を挙げた就業者 59.0%
転職のきっかけに「ボーナス」を挙げた20代(全世代で最高) 41.3%

出典:PE-BANK調べ「2026年 夏のボーナス実態調査」(2026年6月実施・全国20〜60歳の就業者n=300)

夏のボーナス後、転職市場は本当に動くのか?

結論からいうと、「ボーナス支給後は転職が動く」という通説は、今年のデータでも裏づけられています。PE-BANK社の調査では、ボーナス支給後の転職について「現在考えている」が10.3%、「考えたことはある」が22.7%、そして「実際に転職したことがある」が15.7%。合計すると48.7%——就業者の約半数が、賞与を転職のトリガーとして経験・意識していることになります。

KEY METRIC / ボーナス支給後に転職を考えた・実行した人
48.7%
内訳は「現在考えている」10.3%、「考えたことはある」22.7%、「実際に転職したことがある」15.7%。実際に転職した割合は20代で21.3%、30代で19.0%と、若い世代ほど賞与をキャリアの区切りとして行動に移しています。

出典:PE-BANK調べ「2026年 夏のボーナス実態調査」(2026年6月・n=300)

もちろん、n=300のインターネット調査という規模ですから、この数字だけで市場全体を語るのは早計かもしれません。ただ、「賞与を受け取ってから動く」のは損得を考えれば自然な行動で、毎年6〜7月と12〜1月に転職活動が活発になるのは、採用の現場でも長く実感されてきたパターンです。今年は物価高で賞与への不満が高まりやすい状況も重なっており、この夏も例年どおり——あるいは例年以上に——市場が動く可能性は十分にありそうです。

採用する側から見ると、これは年に数回しかない「母集団がふくらむ季節」です。しかも、賞与をきちんと受け取ってから計画的に動く層には、現職で一定の評価を得ている人材が少なくありません。7月の求人施策は、そうした層に届くかどうかで成果が変わってきます。

きっかけは「給与」59%——でも、額の競争だけが答えなのか?

では、いま動き出した候補者たちは何を求めているのでしょうか。同調査で転職を検討するきっかけを聞くと、最も多いのは「給与」で59.0%。40〜50代では70.0%まで上がります。一方、20代では「ボーナス」をきっかけに挙げた人が41.3%と全世代で最も高く、賞与そのものが若手の去就を左右していることがうかがえます。

IMPACT MAP / 転職検討のきっかけ(複数回答)
「給与」がきっかけ(全体)59.0%
「給与」がきっかけ(40〜50代)70.0%
「ボーナス」がきっかけ(20代・全世代最高)41.3%

出典:PE-BANK「2026年 夏のボーナス実態調査」(2026年6月・n=300)

「やはり給与か……」とため息が出そうになりますが、ここで少し立ち止まりたいのは、すべての企業が額で応戦できるわけではないという現実です。帝国データバンクが2026年6月に行った調査(n=1,043社)では、今年の夏季賞与を「増額する」企業は全体の37.1%。大企業では44.4%まで上がるものの、中小企業は36.0%にとどまります。増額競争を仕掛けられるのは、そもそも一部の企業だけなのです。

だからこそ、額で競えない企業に残されているのは「見せ方」の勝負だと、わたしたちは考えています。給与への不満で動き出した候補者は、皮肉なことに、次の会社を「額だけ」では選びません。同じ失望を繰り返したくないからこそ、仕事内容、裁量、働き方、そして会社の正直さを、求人票や採用サイトから注意深く読み取ろうとします。給与以外の魅力をどう言語化するかは、転職理由TOPは給与、でも上がるのは4割──中小が勝負する給与以外の3レイヤーでも詳しく書いていますので、あわせてご覧ください。

いま、採用担当は何から手をつければいい?

まず押さえたいのは、この季節に動く候補者の「時間軸」です。賞与を受け取ってから動くと決めていた人は、支給日を境に一気に情報収集を始めます。つまり、7月中旬から夏いっぱいの求人ページへのアクセスは、普段より「本気度の高い訪問」が混ざりやすい。ここで数カ月前のまま放置された求人原稿や、給与欄に「当社規定による」としか書かれていない採用サイトに出会うと、候補者は静かに離脱していきます。

逆にいえば、いまの時期に原稿の鮮度と情報の具体性を整えておくだけで、動き出した候補者の受け皿になれる可能性が高まります。特別な予算がなくても、今週から始められることは意外とあるはずです。具体的なアクションは記事の後半にまとめました。その前に、候補者の側からこの季節がどう見えているのか、少しだけ想像してみたいと思います。

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TIMELINE / ボーナス後、候補者はいつ動くのか
支給直後(6月末〜7月上旬)── 情報を集める時期
明細を見て「動くかどうか」を決める段階。求人サイトの閲覧や企業名での検索が増えますが、応募にはまだ至りません。ここで見られるのは、求人票よりも採用サイトや会社の見え方です。
7月下旬〜8月 ── 実際に応募が動く時期
迷っていた人が決断する時期です。同時に、企業側は夏季休暇で選考が止まりやすい。返信が数日遅れるだけで他社に決まるのがこの時期の特徴で、休暇中の連絡体制を決めておくかどうかで差が出ます。
9月以降 ── 下半期の体制づくりと重なる時期
夏に動いた人の転職先が決まり、市場は一度落ち着きます。ここで採り逃していると、次に母集団がふくらむのは冬の賞与後。夏の反省を原稿に反映しておくなら、この時期がちょうどよいタイミングです。

※この時期区分は公表統計ではなく、Coachersが採用支援の現場で見てきた動きを整理したものです。

見落とされやすいのは、企業側がいちばん動きにくい8月に、候補者はいちばん動くという食い違いです。夏季休暇で採用担当が不在になり、面接日程の調整が翌週送りになる。その1週間が、候補者にとっては他社の内定が出るまでの時間になっています。休暇前に、応募があった場合の一次連絡だけ誰が返すかを決めておく。それだけでも、この季節の取りこぼしはかなり減らせます。

Coachers編集部
HRブランディングの観点から

今回の調査で印象に残ったのは、48.7%という数字そのものより、「賞与が心の区切りになる」という心理の普遍さでした。金額への納得・不満にかかわらず、明細を受け取った瞬間に、多くの人が一度は自分のキャリアを見つめ直す。採用側にとっての7月は、単に応募が増える月ではなく、「見つめ直した人たち」と最初に出会う月なのだと思います。

CANDIDATE VIEW | 候補者の椅子から

6月末の夜、ボーナスの明細を見て「物価はこんなに上がったのに、この額か」と、静かに転職サイトを開いた一人の候補者を想像してみてください。その人が最初に見るのは、たしかに給与欄かもしれません。でも、給与への失望から動き出した人ほど、「次は額だけで会社を選ばない」と心に決めている——そんなふうにも考えられないでしょうか。

実際、わたしたちが採用支援の現場でお会いする転職者の方々も、「前職より少し下がってもいいから、納得して働ける場所を」と話される方が少なくありません。御社の求人票が、給与のその先——どんな仕事を、どんな裁量で、誰と進めるのか——まで語れているかどうか。この季節、そこが静かに比べられています。

※前半はPE-BANK「2026年 夏のボーナス実態調査」(転職きっかけ「給与」59.0%)をもとにした推測、後半は採用支援の現場での実感にもとづく描写です。

額で競える企業が一部に限られる以上、多くの企業にとっての勝負どころは、給与以外の魅力をどこまで具体的に、正直に言語化できるかに移っています。これはまさにHRブランディングの領域で、求人広告の原稿を一段深く見直すだけでも、候補者に届く情報の質は変わってきます。

わたしたちCoachersも、この季節は自社の採用ページを見直すタイミングにしています。年に数回の「市場が動く季節」を、慌てて追いかける月ではなく、備えて迎える月にできるといいですよね。

ACTIONS / 今日からできる3つ
求人原稿の「給与欄のその先」を点検する
給与・賞与の情報はできる範囲で具体的に、正直に。そのうえで、仕事内容・裁量・働き方など「額以外の判断材料」が候補者に伝わる分量で書かれているかを見直してみましょう。
7〜8月に合わせて求人情報の鮮度を上げる
市場が動く季節に、数カ月前のままの原稿はもったいないところ。募集要項の更新、写真や社員の声の差し替えなど、小さな更新でも「動いている会社」であることは伝わります。
応募から面接までのスピードを整えておく
ボーナス後に動く候補者は、複数社を並行して比較しています。応募への返信スピードと面接日程の選択肢を先に整えておくと、せっかくの出会いを逃しにくくなります。
FAQ / よくある質問
Q. 夏のボーナス支給後に転職者は本当に増えるのですか?
PE-BANK社の2026年6月調査(n=300)では、ボーナス支給後に転職を考えた・実行した就業者は48.7%(検討中10.3%・経験22.7%・実際に転職15.7%)でした。一般に賞与支給後の6〜7月と12〜1月は転職活動が活発になりやすい時期とされています。
Q. ボーナス額で大手に勝てない中小企業は、どう採用で戦えばいいですか?
帝国データバンクの調査では、2026年夏季賞与を増額する企業は全体の37.1%(中小企業は36.0%)にとどまり、額の競争ができる企業は一部です。給与情報を正直に示したうえで、仕事内容・裁量・働き方など給与以外の魅力を具体的に言語化し、求人の見せ方で選ばれる工夫が現実的な戦い方といえます。
Q. ボーナス後の候補者に届く求人にするには、何から始めればいいですか?
まずは求人原稿と採用サイトの更新から。募集要項の鮮度を上げ、給与欄の先にある判断材料(仕事内容・チーム・成長機会)を具体的に書き、応募後の連絡スピードを整えることが、この季節の第一歩になります。
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中村 尚人

中村 尚人 取締役 / ディレクター

新卒で株式会社日立製作所に入社。2021年にCoachers立ち上げメンバーとして参画。採用関連のクリエイティブやマーケティングの戦略設計、ディレクションを担当。

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