求人広告・媒体RECRUITING JOURNAL

固定残業代の求人票の書き方──明示が必要な3項目と、金額が足りているかの計算

固定残業代の求人票の書き方──明示が必要な3項目と、金額が足りているかの計算

「月給27万円(固定残業代含む)」。求人票でよく見るこの1行には、厚生労働省が求人票に書くよう求めている項目が、1つも入っていません。

固定残業代を払う会社が書くのは、基本給の額、固定残業代の時間数と金額、超えた分を追加で払う旨の3項目です。2015年度にハローワークへ寄せられた、求人票と実際の条件の違いの申出で最も多かったのも、固定残業代を含む賃金に関するものでした(同省調べ)。

この記事では、固定残業代の求人票の書き方を、明示する3項目、金額が足りているかの計算、時間数の決め方の順に、給与欄の記入例つきで書きます。

固定残業代は求人票に何を書けばよいのか?

固定残業代を払う会社が求人票に書くのは、①固定残業代を除いた基本給の額、②固定残業代の時間数と金額、③その時間を超えた分を追加で払う旨、の3つです。

固定残業代とは、残業の有無にかかわらず、一定時間分の時間外労働などの割増賃金を定額で払う仕組みのことです。

厚生労働省は、2018年1月施行の改正職業安定法に合わせたリーフレットで、募集時の書き方としてこの3項目を示しています。若者雇用促進法に基づく指針でも、同じ3項目の明示が定められています。

手当の名前は問いません。「営業手当」「職務手当」という名前でも、中身が一定時間分の残業代なら固定残業代です。残業代以外の分が混ざる手当は、残業代の部分を分けて書きます。

次のような書き方は、3項目のどれかが欠けています。

  • 「月給27万円(固定残業代含む)」…基本給も、時間数も金額も分からない
  • 「固定残業代30時間分を含む」…固定残業代の金額が分からない
  • 「みなし残業あり」…3項目のどれも書かれていない
  • 基本給と固定残業代は分けたが、超えた分の支給を書いていない

固定残業代の金額は足りているか?計算で確かめる

固定残業代の金額は、「基本給の時間単価×1.25×固定残業時間」を下回らないようにします。時間外労働の割増率は、労働基準法で25%以上と決まっているためです。

計算は3段です。まず月平均の所定労働時間を、(365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12で出します。次に、基本給をその時間で割って時間単価を出します。

年間休日125日、1日8時間の会社なら、月平均の所定労働時間は160時間です。基本給22万円なら時間単価は1,375円になります。

30時間分の固定残業代に必要な額は、1,375円×1.25×30時間で51,562.5円です。少なくとも51,563円を払う設計にします。

時間単価の元になる賃金には、基本給のほか資格手当など毎月決まって払う手当も入ります。家族手当・通勤手当・住宅手当などは除きます。手当がある会社は、その分も足して計算します。

もう1つ、固定残業代は最低賃金の判定に入りません。基本給などを月平均の所定労働時間で割った額が、都道府県の最低賃金を下回らないかも同じ計算で確かめます。2026年度の改定は10月1日から順次発効しています(最低賃金と月給の点検はこちら)。

固定残業時間は何時間にするか?

固定残業時間は、実際の残業の実績に近い時間にし、月45時間を超えないようにします。月45時間は、36協定で定める時間外労働の原則の上限です。

実績より大幅に多い時間を設定すると、その時間まで残業がある会社と受け取られることがあります。厚生労働省のリーフレットも、時間外労働の記載例に「あり(月平均20時間)」と実績を示しています(残業時間の書き方はこちら)。

逆に実績より少なければ、超えた分を毎月計算して払います。固定残業代は残業代の計算をなくす制度ではありません。③の追加支給は、起きる前提で書きます。

厚生労働省のリーフレットは、基本給と割増賃金の部分を判別できないとした最高裁判決(2012年3月8日)を参考に挙げています。分けて書くことは見せ方の工夫である前に、制度が成り立つ前提です。

例:給与欄の記入例(固定残業代あり)

月給272,000円(①基本給220,000円 ②固定残業手当52,000円:時間外労働の有無にかかわらず30時間分の時間外手当として支給 ③30時間を超える時間外労働分は追加で支給)/残業実績:月平均18時間(2026年4〜9月・施工管理職)

架空の設備工事会社の記入例です。年間休日125日・1日8時間で計算した場合、30時間分の必要額は51,563円で、52,000円はそれを上回ります。

Coachers編集部の考察

固定残業代の書き方は法令の話に見えますが、給与欄は他社の求人と並べて比べられやすい欄でもあります。基本給と時間数が並んでいれば、同じ物差しで比べてもらえます。

給与欄は、求人票→応募→面談→内定→入社と続く候補者体験の最初の段です。面談で内訳を聞かれた答えや内定時の書面が求人票と違えば、そこで話がこじれます。冒頭の申出の最多が賃金だったのも、この段のずれです。

求職者目線

「月給27万円(固定残業代含む)」を見た候補者は、基本給がいくらで、何時間の残業が前提なのかを自分で推し量るしかありません。わたしたちが求人票の制作で見てきた候補者は、内訳が書かれていない給与欄を、不利な側に読みがちです。

書き足すのは数字3つです。給与を上げなくても、比べられ方は変えられます。

今日からできる3つ

  1. 掲載中の求人票の給与欄を、3項目で点検する
    基本給の額、固定残業代の時間数と金額、超えた分の追加支給の3つがそろっているかを見ます。1つでも欠けると、厚生労働省が示す書き方を満たさず、候補者にも内訳が伝わりません。
  2. 固定残業代の金額を計算し直す
    時間単価×1.25×時間数で必要額を出します。賃上げで基本給を上げたのに固定残業代を据え置いていると、必要額に届かなくなっていることがあるためです。
  3. 固定残業時間の横に、残業の実績を1行足す
    直近半年の月平均残業時間を部署ごとに出し、時間数の横に書きます。時間数だけだと「その時間まで働く前提」と読まれることがあるため、厚生労働省の記載例と同じく実績を添えます。

よくある質問

Q. 固定残業代は求人票に書かないといけませんか?

固定残業代制を採っているなら書きます。厚生労働省は、2018年1月施行の改正職業安定法に合わせて、基本給の額、固定残業代の時間数と金額、超えた分を追加で払う旨の3つを明示する書き方を示しています。

Q. 手当の名前が「営業手当」でも、固定残業代として書きますか?

書きます。名称にかかわらず、一定時間分の時間外労働などに対して定額で払う割増賃金は固定残業代にあたります。残業代以外の分を含む手当なら、残業代の部分を分けて書きます。

Q. 固定残業代は最低賃金の計算に含めてよいですか?

含めません。時間外手当などの割増賃金は最低賃金の対象外です。基本給など対象となる賃金を月平均の所定労働時間で割った額で、都道府県の最低賃金と比べます。

あわせて読みたい

出典

厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」2016年12月(若者雇用促進法に基づく指針・参考資料「賃金・固定残業代に関する申出・苦情等」厚生労働省職業安定局調べ 平成27年度) mhlw.go.jp

厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ ~労働者の募集や求人申込みの制度が変わります~<職業安定法の改正>」施行日2018年1月1日 mhlw.go.jp

厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」 mhlw.go.jp

THANK YOU FOR READING.記事一覧に戻る ↗
ABOUT HR PLAYBOOK

「いい採用」を、
もっと世の中に。

採用に、ひとつの正解はない。
だからこそ、考えるヒントと実践の工夫を。
企業の採用と組織づくりに向き合うCoachersが、
人と組織の「次の一手」をお届けします。

私たちについて
LET’S THINK
TOGETHER.

自社の採用について、
一緒に考えてみませんか。

Coachersに相談する