試用期間の3か月で、見極めているのは会社だけではありません。中途で入った人もまた、「この会社で続けるか」を静かに見極めています。
試用期間の面談を終了間際の1回で済ませると、入社前に聞いた話とのズレは、言葉にされないまま残りがちです。面談は入社2週間・入社1か月・終了の1か月前の3回に分け、回ごとに聞くことを変えると、ズレを早く拾えます。
この記事では、試用期間の面談の回し方、1回目に聞く質問、本採用の判断で記録に残すこと、そのまま使える面談シートの記入例をまとめます。
試用期間の面談とは?いつ、何回やるのか
試用期間の面談とは、本採用の前に、会社と中途入社者が「入社前に伝えた期待」と「入社後の実際」を突き合わせる面談です。3か月の試用期間なら、入社2週間・入社1か月・終了の1か月前の3回に置きます。
試用期間の長さに法令の定めはありません。大阪府の労働相談の解説資料によると、試用期間は3か月が最も多く、1か月から6か月までが大半です(労働政策研究・研修機構の2014年の調査より)。
面談が終了間際の1回だけだと、課題を初めて伝えるのが終了直前になります。本人には直す時間が残らず、会社も「伝えて、支えたうえで判断した」と言えなくなります。
3か月の試用期間なら、次の3回に分けて置きます。
- 1回目(入社2週間):ズレを聞く
入社前に聞いた話と違ったことを、本人の口から聞く回です。評価はまだ伝えません。ここで出たズレは、早く手を打つほど小さく済みます。 - 2回目(入社1か月):期待との差を伝える
会社が期待していることと、いまの働きぶりの差を具体的に伝える回です。差があれば、3回目より前の期限で何をするか、会社が何を支えるかを決めて記録します。 - 3回目(終了の1か月前):本採用の判断を伝える
本採用の判断と、その後に任せる仕事を伝える回です。本採用しない場合は解雇にあたり、30日前の予告か30日分以上の平均賃金の予告手当が要るため(労働基準法20条)、終了直前ではなく1か月前に置きます。
見極めより先に、1回目の面談で何を聞くか?
試用期間の1回目の面談で最初に聞くのは、評価ではなく、入社前に聞いていた話と実際に違ったことです。
入社前の説明や面接のやりとりから、入社者は「こういう仕事、こういう働き方になる」という約束を受け取っています。組織行動論では、こうした書かれていない約束を「心理的契約」と呼びます。
この約束が破られたと受け止められると、会社への信頼や働く意欲が下がりやすいとされています。本人が口にしなくても、ズレが生じている場合があります。
ただ、「何か困っていることはありますか」と聞いても、答えは「特にありません」で終わりがちです。答えやすいのは、具体を1つだけ求める質問です。
- 入社前に聞いていた話と、実際に違ったことを1つ挙げるとしたら何ですか
- この1か月で、誰に聞けばいいか分からず止まった場面はありましたか
- 前の会社のやり方のほうが早いと感じた仕事はありますか
- 2か月目に任せてほしい仕事、まだ早いと感じる仕事はどれですか
本採用を迷うとき、試用期間の面談で何を残すか?
本採用を迷うときに試用期間の面談で残すのは、伝えた期待、決めた期限、会社がした支援の3つです。
試用期間中でも労働契約はすでに成り立っているため、終了後に本採用を拒否することは解雇に当たります。通常の解雇より広い範囲で認められるものの、労働契約法16条の制約を受けます。
能力や適性の不足を理由にする場合は、不足の評価が妥当か、指導や研修など改善の努力を尽くしたかが問題になることが多い、と大阪府の資料は解説しています。
試用期間の延長は、判例では、就業規則などで延長の可能性や事由、期間を定めていることに加え、当初の期間では判断しきれないといった理由が必要とされています。延長するなら期間を明示して告知します。
本採用でも、見送りでも、延長でも、2回目の面談の記録がその判断の土台になります。
① 1回目(入社2週間・11月中旬)入社前の話と違ったこと:「顧客訪問は週3日と聞いていたが、最初の2週間は社内の見積もり作成が中心だった」。会社の答え:11月後半から既存顧客5社を順に引き継ぐ予定を、その場で伝えた。
② 2回目(入社1か月・11月末)伝えた期待:12月20日までに、引き継いだ5社のうち3社へ1人で訪問し、見積もりを1件出す。会社の支援:課長の同行は2回まで、最初の見積もりだけ課長が確認する。
③ 3回目(終了の1か月前・12月下旬)伝えた判断:本採用。1月から担当を8社に広げる。本人から出たこと:見積もりの社内ルールが分かりにくい → 課長が手順を1枚にまとめる。
④ 本人との共有:各回の記録をその週のうちに本人へ送り、内容に違いがないかを確かめた日を書く。
架空の会社の記入例です。11月1日入社・試用期間3か月(1月末まで)の場合。本採用しないときの30日前の予告に間に合うよう、3回目を終了の1か月以上前に置いています。
試用期間という言葉は、会社が入社者を試す期間に聞こえます。けれど中途採用では、入社者のほうも、求人票や面接で聞いた話が本当だったかを確かめています。試用期間は、両側から答え合わせをする期間です。
候補者体験は、求人票、応募、面接、内定、入社と続きます。試用期間の面談は、その最後で「入社前に伝えたこと」が正しかったかを確かめる段です。1回目で出たズレは、次の求人票や面接の説明を直す材料として、採用の入口に戻せます。
入社1か月の中途入社者は、「聞いていた話と違う」と感じても、それを口にすると不満を言っているように見えるのでは、とためらうかもしれません。聞かれないままだと、ズレは言葉にされず、続けるかどうかの判断材料に回っていくことも考えられます。
だから1回目は、会社の側から「違ったことを1つ」と聞いておく。それだけで、ズレは本人が抱えるものから、会社と一緒に直すものに変わりやすくなります。
今日からできる3つ
- 3回の面談日を、入社日にカレンダーへ入れる
入社2週間・入社1か月・終了の1か月前の3つを、入社した日に予定として押さえます。後で決めようとすると業務に押され、終了間際の1回だけになりがちだからです。 - 1回目の質問を「違ったことを1つ」に変える
「困っていることは?」を「入社前の話と違ったことを1つ」に置き換えます。書かれていない約束(心理的契約)のズレは、具体を1つ求めるほうが言葉にしやすくなります。 - 2回目で伝えた期待と支援を、その週のうちに本人と共有する
期待、期限、会社の支援を書いて本人に送ります。本人には直す時間と目安ができ、会社には本採用を判断するときの根拠が残ります。
よくある質問
Q. 試用期間の面談は誰がやるのがよいですか?
仕事の期待を具体的に伝えられる直属の上司が中心です。上司には言いにくいこともあるため、1回目だけでも人事が別に話を聞く時間をとると、ズレを聞き出しやすくなるはずです。
Q. 試用期間を延長することはできますか?
判例では、就業規則などで延長の可能性や事由、期間を定めていることに加え、当初の期間では判断しきれないといった理由が必要とされています。就業規則に根拠がなくても、本人の同意があり、必要最小限の期間なら有効とした判例もあります。
Q. 本採用しない可能性は、いつ伝えればよいですか?
2回目の面談で、期待との差と改善のための支援をあわせて伝えます。本採用しない場合は30日前の予告か予告手当が要るため、判断は終了の1か月前までに出します。終了直前に初めて伝えると、本人に直す時間もありません。
あわせて読みたい

中途採用のオンボーディング計画──最初の90日で任せる仕事を3段に分ける

求人票の試用期間の書き方──条件が本採用後と違うなら両方の明示が求められる

内定通知書の書き方──中途採用で承諾を後押しする7項目と記入例
出典
大阪府 労働相談の解説資料「14 試用期間」令和8年3月更新(試用期間の長さは独立行政法人労働政策研究・研修機構「従業員の採用と退職に関する実態調査」平成26年を引用) pref.osaka.lg.jp



