中小企業の採用計画を立てるとき、主語になるのは新卒より中途なのかもしれません。帝国データバンクが2026年2月に行った調査では、2026年度に中途社員を採用する予定がある中小企業は48.7%。新卒の30.7%を18ポイント上回りました。
ところが採用計画の立て方は、年に1回、4月に入社する人数を決める新卒の型のままになっていることがあります。中途採用は職種ごとに入社の時期がばらばらで、内定から入社までに前職の退職手続きも挟まります。
この記事では、中小企業の採用計画のいまを数字で確かめたうえで、中途採用の計画を「入社したい月」から逆算して立てる4つの手順と、1枚の採用計画表の記入例を紹介します。
中小企業の採用計画は、いまどうなっている?
中小企業では、新卒より中途の採用を予定している会社のほうが多いです。帝国データバンクの調査では、2026年度に正社員の中途社員を採用する予定がある中小企業は48.7%、新卒新入社員は30.7%でした。

大企業は新卒と中途がほぼ並び、中小企業は中途が18ポイント上回ります。
大企業では新卒72.7%、中途74.1%と、ほぼ同じ水準です。差が開いているのは中小企業のほうです。
調査には、中小企業から「大企業のように初任給を大きく上げられず、新卒の採用は厳しい」という趣旨の声が寄せられています。
正社員の採用予定がある企業の割合そのものも、規模で開いています。大企業は85.0%、中小企業は56.0%でした。
中小企業のうち小規模企業に絞ると、36.0%です。
なお、これは2026年2月時点の見通しです。半年以上たったいまは動いているかもしれません。ただ、中小企業では中途の採用を予定する会社が新卒より多いという形は、計画の立て方を考えるうえで押さえておきたいところです。
新卒の型のままだと、なぜ中途の計画は外れる?
中途採用の計画が外れやすいのは、新卒と違って入社の時期が職種ごとにばらばらで、内定から入社までに前職の退職手続きが挟まるからです。
新卒採用は、4月の一斉入社に向けて、毎年ほぼ同じ時期に動きます。計画表は「来年度に何人」の1行でも回ります。
中途採用は違います。欠員の席は、退職日が決まった時点で空くことが確定します。増員の席は、新しい拠点や事業が動き出す月に合わせて必要になります。
内定から入社までの期間も読みにくいところです。期間の定めのない雇用なら、法律上は退職の申し入れから2週間で契約が終わります(民法627条1項)。
ただ実際には、引き継ぎや前職の就業規則を踏まえて、入社日をもう少し先に置く人もいます。
計画が外れると、担当者の頑張りが足りなかったように見えがちです。けれど多くの場合は、新卒用の「年1回・人数だけ」の表で中途を回している、という表の形の問題です。
求人を出してから入社するまでの期間は、採用リードタイムと呼ばれます。中途採用の計画は、人数ではなく、このリードタイムを職種ごとに置くところから始めると組み立てやすくなります。
採用計画はどう立てる?中途採用の4つの手順
中途採用の採用計画は、職種ごとに1行を立て、入社したい月から募集開始月を逆算し、最後に手法と予算を当てる順で立てます。
- 職種ごとに1行を立てる
「来年度に3名」とまとめず、職種と席ごとに行を分けます。欠員か増員かもここで書いておきます。まとめたままだと、職種ごとに違う開始時期が最後まで見えません。 - 「入社したい月」を先に書く
欠員なら前任者の退職予定日から引き継ぎ期間を引いた月、増員なら事業や拠点が動き出す月です。人数より先に月を決めると、残りの欄が埋めやすくなります。 - 募集開始月を逆算する
入社したい月から「内定から入社まで」「選考」「募集」の期間を順に引きます。期間は業界の平均ではなく、自社の前回の実績を入れます。分からない欄は「不明」と書き、次の採用で測ります。 - 手法と予算を、募集期間の長さに合わせる
募集に取れる期間が短い行と、長く取れる行では、向く手法が変わります。予算から手法を決めるのではなく、期間と必要な応募数から決めると、媒体や紹介会社との話も具体的になります。
必要な応募数の出し方は、採用計画の立て方──中小企業の59.6%が予定人数を採れない、下期の4手順で、選考の歩留まりから逆算する型として紹介しています。
金属加工業・従業員60人(職種ごとに1行)
・生産管理|欠員(前任者が2027年3月末に退職予定)|入社したい月 2027年2月|内定から入社まで1.5か月・選考1か月・募集1.5か月 → 募集開始 2026年10月|求人広告+社員紹介
・法人営業|増員(2027年4月の新拠点開設に合わせる)|入社したい月 2027年4月|内定から入社まで1.5か月・選考1か月・募集2か月 → 募集開始 2026年11月中旬|求人広告
期間は自社の前回の実績で入れます。記入例は書き方を示すための架空の内容です。
表にすると、同じ「2名」でも、募集を始める月が職種ごとにずれることが見えます。
記入例の生産管理のように、開始月が今月になる行もあります。年度の初めに人数を決めてから動く形だと、この行は入社したい月に間に合いません。
採用計画は、社内の書類として扱われがちです。けれど候補者体験で見ると、求人票がいつ世に出るかという最初の段と、いつ入社するかという最後の段を、計画表が決めています。
求人票の中身や面接の質をいくら整えても、出す月が遅ければ、その候補者はもう別の会社で選考を進めているかもしれません。計画表の「募集開始月」の欄は、候補者体験の入口の日付でもあると考えています。
御社の求人を開いた中途の候補者は、いまの職場で働きながら見ているのかもしれません。その人は内定をもらってから、上司に退職を伝え、引き継ぎを組み、ようやく入社日が決まります。
わたしたちが現場で見てきた中でも、入社日の調整で話がこじれる場面は、計画の側が「内定から入社まで」を短く見積もっていたときに起きがちでした。
退職手続きの期間を計画に最初から入れておくことは、候補者に「前の職場をきちんと辞めてきてください」と伝えることでもあります。入社日を急かされない会社は、それだけで安心して選ばれやすくなるのではないでしょうか。
今日からできる3つ
- この先1年で空きそうな席を、職種ごとに1行ずつ書き出す
退職の予定、定年、事業計画の3つから拾います。人数の合計ではなく行で持つと、職種ごとに違う開始月が見えるようになります。 - 前回の中途採用で、募集開始から入社まで何か月かかったかを調べる
求人の掲載日と入社日を並べるだけで出せます。自社の実績には、職種・地域・条件の事情が全部入っているので、どの平均値よりも計画に使いやすい数字です。 - 募集開始月が今月以前になった行から、求人票の準備に入る
開始月が今月か、もう過ぎている行は、入社したい月を後ろにずらすか、短い期間でも届く手法に切り替えるかを、いま決める必要があります。決めないまま年度を迎えると、その席は空いたままになります。
よくある質問
Q. 採用計画はいつ立てればいいですか?
中途採用は職種ごとに入社したい月から逆算するので、立てる時期も職種ごとに変わります。来年度の予算を組む前に、席ごとの募集開始月を出しておくと、予算と時期をそろえて決められます。
Q. 中途採用は、内定から入社までどのくらいかかりますか?
期間の定めのない雇用なら、法律上は退職の申し入れから2週間で契約が終わります(民法627条1項)。実際には引き継ぎや前職の就業規則によって、もう少し先になることもあります。計画には自社の前回の実績を入れるのが確実です。
Q. 中小企業は、新卒より中途採用を予定している会社が多いのですか?
2026年2月に約1万社を対象に行われた調査では、2026年度に正社員を採用する予定がある中小企業は、中途社員で48.7%、新卒新入社員で30.7%でした。大企業はどちらも7割台で、中途と新卒の差が大きいのは中小企業のほうです。
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出典
帝国データバンク「2026年度の雇用動向に関する企業の意識調査」2026年3月23日公表・調査期間2026年2月13日〜28日・有効回答10,416社 tdb.co.jp
民法(明治29年法律第89号)第627条第1項 laws.e-gov.go.jp



