御社の求人票の「求める人材像」に、「コミュニケーション能力が高い方」と書いていないでしょうか。帝国データバンクが2026年10月22日に公表した調査では、企業が求める人材像の1位はこの言葉で、30.6%でした。
2位は「真面目、または誠実な人柄」、3位は「意欲的」。上位はどれも性格や素質を表す言葉です。求める人材像がこうした言葉だけで書かれていると、候補者は自分が当てはまるかをどう判断すればよいのでしょうか。
この記事では、求める人材像の決め方を、言葉を「仕事の場面」と「その場面での行動」に書き換え、面接で確かめる質問までつなげる3段の手順で紹介します。生産管理職の記入例も載せています。
求める人材像とは?企業が挙げた上位は何か
求める人材像とは、その仕事で採りたい人の特性や行動を言葉にしたもので、求人票の記載と面接の評価軸のもとになります。
帝国データバンクが全国1,333社に聞いた2026年10月の調査では、求める人材像の1位は「コミュニケーション能力が高い」の30.6%でした。上位7項目は次のとおりです(3つまでの複数回答)。

上位は性格や素質を表す言葉です。「専門的なスキルを持っている」「AIやデジタル技術を活用できる」は低位にとどまりました。
中途採用がメインの企業(回答企業の8割強)に絞ると、1位は「コミュニケーション能力が高い」と「真面目、または誠実な人柄である」の30.4%で並びます。
「責任感がある」は中途メインの28.4%に対し、新卒採用がメインの企業は21.5%でした。
「行動力がある」も、中途メインの20.2%に対し、新卒メインは12.6%です。中途メインの企業では、責任感と行動力を挙げる割合が新卒メインより高くなりました。
なぜ「コミュニケーション能力」と書くだけでは伝わらないのか
求める人材像を「コミュニケーション能力が高い」と書くだけでは、候補者は自分が当てはまるかを判断しにくく、面接官も人によって違うものを見てしまいます。
言葉が広すぎて、仕事のどの場面の力なのかが書かれていないからです。同じ言葉でも、営業なら初対面の相手から困りごとを聞き出す力、経理なら締め日の前に各部署へ書類を催促する力を指します。
同じ調査によると、2022年9月の同様の調査でも1位は「コミュニケーション能力が高い」でした。4年たっても、企業が求める言葉は大きく変わっていません。
わたしたちが求人票づくりで見てきた中でも、「コミュニケーション能力」は多くの会社が求める人材像に書く言葉です。
同じ言葉を書く会社が多いほど、言葉だけでは他社との違いが伝わりません。差がつくのは、その言葉が自社の仕事でどんな行動を指すかまで書いたときです。
求める人材像の決め方は?言葉を場面と行動に書き換える3段
求める人材像は、仕事で困る場面を選び、その場面での行動を1文にし、過去の行動を聞く質問にする、の3段で決めると、求人票と面接で同じものを指せます。
- 仕事で困る場面を1つ選ぶ
現場の上司に「この仕事で、去年いちばん困った場面は何か」を聞きます。言葉から考え始めると一般論に戻るため、先に場面を決めます。 - その場面でしてほしい行動を1文にする
「誰に・いつまでに・何をするか」まで書きます。行動まで落とすと、候補者は自分の経験と照らし合わせられ、面接官の見方もそろいます。 - 過去の行動を聞く質問にする
「同じような場面で、実際にどうしましたか」と過去の事実を聞きます。「できますか」と聞くと、誰でも「できます」と答えられてしまうからです。
項目は3つまでに絞ります。並べすぎると何を重視しているかがぼやけ、面接で1つずつ確かめる時間も取れなくなります。
① コミュニケーション能力が高い
場面:協力工場3社のうち1社の納期が遅れそうなとき
行動:遅れが分かった日のうちに営業と工場長へ伝え、代わりの日程案を2つ出せる
質問:「取引先の遅れが分かったとき、最初に誰に何を伝えましたか」
② 責任感がある
場面:自分が組んだ生産計画に誤りが見つかったとき
行動:原因と直し方を、翌朝の朝礼で自分から説明できる
質問:「自分の判断で起きたミスを、周りにどう伝えましたか」
③ 行動力がある
場面:同じ部品の欠品が月に2回以上続いたとき
行動:発注の基準を見直す案を、指示を待たずに上司へ出せる
質問:「指示を待たずに、仕事の仕組みを変えた経験はありますか」
架空の会社(従業員80名の金属部品メーカー)の記入例です。求人票には「行動」の行を、面接官には「質問」の行を渡します。
求める人材像を性格の言葉で書くこと自体は、間違いではありません。調査でも、知識や経験は入社後に身につけられるが資質は変えにくい、という企業の声が紹介されています。
気をつけたいのは、言葉が抽象のままだと、「人柄」の判断が面接官それぞれの印象に任されることです。
過去の行動を聞く質問は「行動面接」と呼ばれる考え方です。わたしたちが面接の設計を手伝ってきた中でも、「もし〜なら」と仮定で聞くより、実際にどうしたかを聞くほうが、答えに人ごとの違いが出やすいと感じています。
求める人材像は、求人票で「この行動ができる人」と伝え、面接でその行動を過去の事実で確かめ、入社後の最初の評価でも同じ行動を見る、という候補者体験の起点です。どこか1か所だけ言葉が違うと、候補者が受け取った約束がずれます。
「コミュニケーション能力が高い方」と書かれた求人を開いた候補者は、自分のどの経験が当てはまるのか決めきれず、応募を見送るかもしれません。「納期の遅れを当日中に伝えられる方」とあれば、同じ場面に立った人は、自分のことだと気づきやすいはずです。
求める人材像を行動で書くことは、選ぶための基準であると同時に、候補者が「自分が呼ばれている」と分かるための一行でもあります。
今日からできる3つ
- 求人票の「求める人材像」に印を付ける
性格の言葉だけで終わっている行に印を付けます。印の付いた行が、候補者が自分ごとにしにくい行です。 - 現場の上司に「去年いちばん困った場面」を1つ聞く
場面から書くと言葉が自社の仕事の行動に変わり、他社の求人と同じ文面になりません。 - 面接の質問を「できますか」から「どうしましたか」に変える
書き換えた行動ごとに過去の事実を聞く質問を1つ用意し、面接官全員に同じ紙で渡します。面接官ごとの見方のぶれが小さくなります。
よくある質問
Q. 求める人材像と求める人物像の違いは?
どちらも採りたい人の姿を指す言葉で、ほぼ同じ意味で使われています。採用の実務では、性格だけでなく行動まで含めて言葉にしておくと、求人票と面接で同じものを指せます。
Q. 求める人材像は何項目まで書けばよいですか?
3つまでを目安にすると、面接で1つずつ確かめる時間が取れます。並べすぎると、何を重視しているかが候補者に伝わりにくくなります。
Q. 中途採用では、スキルと人柄のどちらを書けばよいですか?
仕事に欠かせない経験は応募資格の欄に、人柄は求める人材像の欄に分けて書きます。人柄は「場面での行動」で書くと、経験者が前職の経験と照らし合わせられます。
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出典
帝国データバンク「企業の採用形態と求める人材像アンケート」2026年10月22日公表・調査2026年10月9日〜14日(インターネット調査)・有効回答1,333社 tdb.co.jp



