中途採用をした会社の半分は、必要な人数を採りきれていません。リクルートワークス研究所が2026年6月に公表した調査では、2025年度下半期の中途採用で必要な人数を「確保できなかった」企業が51.5%でした。前年より改善したものの、「確保できた」47.0%をなお上回ります。
採れなかったとき、まず浮かぶのは「応募を増やそう」かもしれません。けれど、応募が足りなかったのか、面接の前に消えたのか、内定のあとに断られたのかで、直す場所はまったく違います。それを見分ける数字が、採用の歩留まりです。
この記事では、採用の歩留まりの意味と計算方法を整理し、応募から入社までを5つの人数で記録する表の作り方を、記入例つきで紹介します。
採用の歩留まりとは何か?どう計算するのか?
採用の歩留まりとは、応募から入社までの選考の各段で、前の段から次の段へ進んだ人の割合です。「次の段に進んだ人数÷前の段の人数×100」で計算します。
たとえば応募40人のうち書類選考を通ったのが20人なら、書類選考の歩留まりは50%です。もとは製造業で、投入した材料のうち製品になった割合を指す言葉でした。
中途採用なら、まず5つの人数を数えます。応募、書類通過、面接の実施、内定、入社です。隣り合う2つで割ると、4つの歩留まりが出ます。
入社の人数を応募の人数で割った値は、応募から見た通算の歩留まりです。採用の全体像をつかむにはこちら、どこで落ちたかを探すには段ごとの値を見ます。
歩留まりの「平均」を探す人も多いのですが、公開されている平均値は調査ごとに分母の取り方や職種・媒体がそろっていません。わたしたちは、他社との比較より自社の前回の募集との比較に使うことをおすすめしています。
なぜ応募数より先に、採用の歩留まりを見るのか?
採用の歩留まりを応募数より先に見るのは、必要な人数が採れなかった原因が「入口」にあるのか「途中」にあるのかで、打ち手も費用も変わるからです。
応募を倍にしても、途中で落ちる割合が同じなら、書類を読む手間も面接の数も倍になります。媒体の費用を足す前に、いちばん細い段を探すほうが安く済むことが多い、というのがわたしたちの見てきた実感です。
生産管理には「ボトルネック」という考え方があります。流れのいちばん細い所を太くしない限り、ほかを太くしても流れる量は増えません。採用の流れも同じです。
もう1つ大事なのは、低い段を2種類に分けることです。会社が落とした段と、候補者が去った段です。書類選考と面接の合否は前者、面接前の辞退と内定辞退は後者にあたります。
前者を直すのは求める人物像と評価の軸、後者を直すのは連絡の速さと渡す情報です。同じ「歩留まりが低い」でも、手を入れる場所が違います。段ごとに疑う場所は、次のとおりです。
- 応募の人数が少ない:求人票の仕事内容と給与の書き方、媒体の選び方
- 書類通過率が低い:応募資格の書き方と、実際に求める人物像のずれ
- 面接の実施率が低い:書類通過を知らせる速さと、日程の出し方
- 内定率が低い:面接官ごとの評価の軸のばらつきと、面接と面接の間の辞退(理由の欄で見分ける)
- 入社率が低い:内定から承諾までに渡す情報と条件の伝え方
採用の歩留まりの記録表は、どう作るのか?
採用の歩留まりの記録表は、1つの求人ごとに5つの人数と4つの歩留まりを並べ、募集を締めるたびに1回分ずつ書き足していく表です。
職種と媒体は分けて書きます。営業と事務、求人サイトと人材紹介を混ぜると、細い段が平均に埋もれて見えなくなるからです。
もう1つ、「落ちた理由」の欄を足します。辞退の連絡にあった一言や、不合格にした理由を短く写すだけで十分です。割合が「どこで」を示し、理由の欄が「なぜ」を示します。
中小企業の採用では人数が少なく、1人の増減で割合が大きく動きます。目安として10人に満たない段は、割合より人数と理由を見てください。数回分の募集を足すと、傾向が見えてきます。
① 求人と期間:法人営業の中途採用/求人サイト1つに掲載/2026年7〜9月
② 5つの人数:応募48人 → 書類通過18人 → 一次面接の実施9人 → 内定3人 → 入社1人
③ 4つの歩留まり:書類通過38%(18÷48)/面接の実施50%(9÷18)/内定33%(3÷9)/入社33%(1÷3)。応募からの通算は2%(1÷48)
④ 候補者が去った段と理由:書類通過から面接までに9人が辞退。うち6人は「他社で選考が進んだ」との連絡。通過の連絡は平均で4日後だった
⑤ 次の募集で直すこと:書類通過の連絡をその日のうちに送り、面接の候補日を3つ添える
架空の会社の記入例です。人数は説明のための数字で、実在の企業や平均値を示すものではありません。内定・入社の段は人数が少ないため、割合より人数で見ます。
この例では、応募を増やすより先に、面接前に去った9人を減らすほうが入社に近づきます。書類通過を知らせる一通の送り方は、面接の日程調整で当日に送る一次連絡の型で扱いました。
内定のあとに去る人が多い会社は、内定辞退を防止する4つの情報が手がかりになります。
歩留まりの表は、求人票から応募、面接、内定、入社までの候補者体験を、会社の側から数字で見たものです。なかでも候補者が去った段は、その人が「この会社はやめておこう」と決めた場所の跡だといえます。
だから細い段の原因は、その段の中だけにあるとは限りません。面接のあとに辞退が多いなら、面接で聞いた話が求人票の印象と違ったのかもしれません。前の段で伝えたことが次の段で裏切られていないかを、あわせて見てください。
わたしたちが現場で見てきた中途の候補者は、多くが同じ時期に複数の会社の選考を進めていました。書類通過の連絡を待つ数日は、その人には「この会社では後回しにされている」と映るかもしれません。
表の上では「面接の実施50%」という1つの数字でも、その裏には、待つ間に気持ちが他社へ移った一人ひとりがいます。歩留まりは、その人たちの判断を後から数える数字です。
求人票や採用サイトで伝えた魅力も、途中の段で途切れれば入社までは届きません。例の会社なら、応募を増やす広告費より先に、通過の連絡を4日から当日に縮める手間のほうが入社に近い。表を1回つけると、そうした順番が見えてきます。
今日からできる3つ
- 直近に締めた募集1つで、5つの人数を数える
記録が無くても、応募の管理画面やメールの履歴から数えられます。1回分あるだけで、どの段が細いかの見当がつき、次の打ち手を当て推量で選ばずに済みます。 - 辞退した人の最後の一言を、理由の欄に写す
割合は「どこで」しか教えてくれないからです。人数の少ない採用では割合がぶれやすく、理由の一言のほうが確かな手がかりになります。 - いちばん細い段を1つ選び、次の募集ではそこだけ直す
ボトルネック以外を太くしても、入社する人数は増えないからです。一度に全部を変えると、どの手が効いたのかも分からなくなります。
よくある質問
Q. 採用の歩留まりの平均は、どのくらいですか?
公開されている平均値はありますが、調査ごとに分母の取り方(応募全体からか、面接の設定からか)や対象の職種・媒体が違うため、自社の数字とそのまま比べるのは難しいのが実情です。まずは自社の前回の募集と比べ、どの段が下がったかを見る使い方をおすすめします。
Q. 歩留まりと内定承諾率は、何が違いますか?
内定承諾率は、内定を出した人のうち承諾した人の割合で、歩留まりの一部です。歩留まりは応募から入社までの各段の通過率をまとめて指す言葉で、内定承諾率はその最後に近い段にあたります。
Q. 応募が少ない会社でも、歩留まりを見る意味はありますか?
あります。ただし人数が少ないと割合は1人で大きく動くため、目安として10人に満たない段は割合より人数と辞退・不合格の理由を見ます。数回分の募集を足して見ると、細い段が見えやすくなります。
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出典
リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2025年度実績、正規社員)」2026年6月12日公表・調査期間2026年1月23日〜3月2日・従業員5人以上の民間企業8,200社に送り3,933社から回収・回答社数3,901社(人数確保の状況は2025年度下半期に中途採用を実施した3,292社の集計) works-i.com



